医療機関で行われている依存症の治療には、通院治療と入院治療があります。通院治療は、糖尿病などの一般的な慢性疾患の治療と同じように、定期的に通院して医師の診察や検査、カウンセリングなどを受けるのが主な内容です。一方、入院治療は数ヶ月間の入院を通して、治療を行います。
例えば、アルコール依存症の場合、急にお酒を飲まなくなるとさまざまな離脱症状が現れるケースもあるのが実情です。長年の飲酒で肝臓などの臓器がダメージを受けている場合もあり、専門的なケアを受けてしっかりと身体を立て直すのが入院治療の特徴です。また、アルコール依存症の治療の場合、通院、入院のいずれでも自助グループのサポートを受けることがあります。
自助グループとは、実際に依存症を経験した人やその家族が加入しているグループのことです。このようなグループでは、依存症に悩んでいる人をさまざまな形でサポートしています。家族を交えて交流会を開いたり、お互いの体験談を披露したりする活動は、依存症に悩む本人だけでなく家族にとっても、治療の一助となっているのです。依存症の治療では、こうした家族の協力が必要なケースは少なくありません。
依存症を抱えた人に周囲がどのような接し方をするかは、治療をするうえでも重要な問題です。看護師が依存症の治療を担当する場合も、家族へのケアはかなりの確率で必要になってきます。基本的に依存症の治療では、医療スタッフと本人、周囲の人のチームワークが不可欠です。
医療の現場における依存症治療の問題として、本人や周囲の誤った認識を持っていることが挙げられます。というのも、依存症は目立つ症状がなくなっても、完治したわけではありません。依存をもたらす物質に接すると症状が再発する可能性があるので、根気強く治療を続ける必要があります。
しかし、ある程度の治療を経て体調が改善すると、その時点で完治したと誤解してしまい、勝手に治療を止めてしまうケースが多いです。特にアルコール依存症にこの傾向が強く、完治したことを祝う名目で再び飲酒を行い、依存症の再発に至ってしまいます。依存症治療は単に身体の不具合を治すだけではなく、本人の誤った認識を改めることも、重要なポイントであることを忘れてはいけません。
その一方で、依存症治療を強制的に行うことはできないため、本人に治療の必要性を認識してもらうことが大切です。そこで、治療に従事する看護師が依存症本人への正しい接し方を学ぶ必要があります。誤った認識に対して頭ごなしに否定するのではなく、依存に至った経緯を踏まえて誤りを修正することが重要です。
人によっては、依存症になったことへの恥ずかしさや罪悪感を抱く人もいるため、安易な批判は避けましょう。依存症はあくまでも心身の不調をもたらす病気であることを示し、健やかな暮らしを営むには治療が不可欠であることを理解させるのが、看護師の務めです。本人の不安を取り除き、治療に前向きな姿勢を持つようにサポートするのが基本となります。そこで、依存症の治療に携わる看護師は、『看護師のための依存症レッスン』を読んで、より深く依存症について理解しておくといいでしょう。